2012年01月17日

ウィリアム・テルのアレ(十回目@)


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「さぁ腐乱さん、どうぞ!」
「ん〜〜・・・」
「いやちょっと待て何をやってるんだ君達は」

注文していた武器“鉄の矢”を受け取りにきた龍之介さんは、
珍妙なことをやっている武器職人を見て思わず突っ込みました。

「矢がちゃんとまっすぐ飛ぶかの検証です!」
「方法が間違っていると思うが」

林檎を頭の上に乗せたキータめがけて、弓矢を構えた腐乱さんが
ギリギリと弦を引き絞っています。

「矢作りの参考にした射手に関する本では、弓矢で狙い撃つ絵は
 だいたいこんな感じに書いてました!」

龍之介さんは、参考にした本がなんなのか追求したくなりましたが
絵本のタイトルが返ってきそうなので止めておきました。


―――――――――――――――――――<本文続き>―――――――――――――――――



「技術の検証はいいが、無駄に危険を冒す必要はないだろう?」

その辺りの台の上に置いた林檎を狙ってもいい。
林檎ではなく、木にチョークで描いた丸印だっていいはず。

「大丈夫です。危険はありません」

龍之介さんの提案に、キータは笑顔で首を振りました。

「この鉄の矢は、わたしが一本一本精魂を込めて作ったものです。
 ぜったいに的を外したりしない自信があります!」
「・・・・ふむ」

腕をグッと構えながら自信満々に言い放つキータ。
職人の意地とでもいうのでしょうか。龍之介さんは思わず唸ります。

「そこまで言うなら、止めるのも無礼だろうな」

短く頷き、龍之介さんはキータの検証を見守ることにしました。
小さくても相手は職人。その意志を尊重することにしたのです。

「ありがとうございます!」

ぱぁぁぁ、と嬉しそうな笑顔を浮かべて、キータは礼を言いました。

「それじゃ、腐乱さん! 遠慮なくどうぞ!!」

そして、長いこと弦を引いたままで待たされていた腐乱さんは、
やっと矢を引く手を離すことができたのです。



後日。

龍之介さんの旅仲間、和弓の使い手であるマイクさんの元に、
頼んでいた鉄の矢の束が届きました。

「へぇ、取扱説明書なんてついてるんだ。面白いね」

矢の束に入っていた古い紙には、『弓で撃っててください』なんて
当たり前の説明文がわざわざイラストつきで書かれている。

いかにも子供らしい微笑ましい心配りに笑いながらページを捲ると
なぜか『絶対ダメです』と書かれた項目があった。

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「・・・人の頭に載せた林檎を撃つのは危ないからダメです?」

何故こんなこと書いてるんだろう、ときょとんとするマイクさん。

彼に矢を届けた龍之介さんは、そっと視線を遠くに逸らしながら
「嫌な事件だったな・・・」と呟くのでした。



ゲストさん:富士見龍之介さん
ゲストさん:茄子田原・G・マイケルさん

posted by りの at 16:23| Comment(0) | キータの日記
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