
「わぁ、また新しい豆発見です! まだ食べられますよ!!」
「んー・・・」
ぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽりぽり
「キータさん、落ちてるものそのまま食べたらお腹壊しますよ!」
なんか知り合いに声をかけにいったら豆を拾って食べてたので
慌てて止めに入ったメリムさんです。
「あ、メリムさん! 今日はいっぱい豆が落ちてるんですよ!!」
「ん」
「これは三日もゴハン抜きで旅してきたわたしへの神様からの
贈り物なのではないかと! きっとそうだと思うのです!!」
「んーん」
腐乱さんがダイナミックに否定のジェスチャーをしていますが
その辺りはスルーしておくキータでした。
「ここに落ちている豆は、節分という儀式の忘れ物ですよ」
「節分?」
「きっとどこかの旅人さんが残していったんでしょうね……」
言われて見るとここは旅人のキャンプ地だったようです。
キータが発見したのは、その住人の豆まきの豆だったのです。
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節分とは――ッ!
豆をまき、まかれた豆を自分の年齢の数だけ食べる儀式ッ!
この儀式は、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い!
一年の無病息災を願うという意味を持つッッッ!!
「……ということなんですよ」
「ふわー、世の中には色んな儀式があるんですねー」
豆をまいちゃうなんて豪華な祭りですね!と驚くキータです。
「じゃ、この豆は食べちゃってもいいんですよね!?」
「ですからその儀式では年齢の数だけ豆を……」
「じ、実はわたし、今年で20、いえ200歳くらいなんです!」
なんか必死に年齢詐欺に挑むキータに溜息をつくメリムさん。
「ごめんなさい嘘でした!」とか涙目で謝りだしたのを見てさすがに
気の毒になってきたので、一つ提案をすることにしたのでした。
「キータさんは豆を集めて洗ってくれますか? せっかくですから
そのお豆でちょっとしたお料理を作ってあげます」
◆
「はい、どうぞ。ポークビーンズを作ってみました」
「わぁぁぁぁ、お肉です、お肉が入ってます!」
ちょうど逃げるお肉を見かけたのでメリムさんが材料にしました。
逃げられなかったお肉にジョブチェンジした彼に合掌です。
「暖かいうちに召し上がってください」
「いただきまーす!」
メリムさんは、服飾職人であると同時に、料理人でもあるのです。
各種調味料を使って味を整えられたポークビーンズは、空腹を
差し引いてもキータにとって極上の味でした。
なにしろキータは、このセルフォリーフにやって来てから一度も
料理された食事を食べたことがなかったのです。

「ふわぁぁぁぁ……美味しいですぅぅぅぅ〜……」
蕩けそうな笑みを浮かべ、心のままの感想を口にするキータ。
「しっしっし、あっちに行ってください」
なんか天から光が降りてきて笑顔の天使たちが迎えに来たので
メリムさんが手でぺしぺしやって追い払っておきました。
―――こうして、キータがはじめて体験するの節分の日は、
まさかの『天使はそと』状態で終わったのです。
ゲストさん:メリム・ファルトリアさん