2012年02月13日

キータと女王さま(十二回目@)

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「お嬢ちゃん、その剣は受けとれんぞ」
「…………え」

武器の納入の日。
自信作の剣を手渡そうとしたキータに、依頼主のシンクレアさんは、
厳しい顔つきを向けてそう言いました。

「どうして、ですか?」
「ふむ。作ってて変に思わなかったかい?」

突然の受け取り拒否に驚くキータに、シンクレアさんは溜息一つ。

「武器の仕様書を読み違えたのかね?
 私が頼んだのは斬撃武器だよ」
「……あ」

その一言で、キータが自分のミスを理解するには十分でした。
シンクレアさんが仕様書までつけて発注した剣・十一式制式大剣を
キータは刺撃用の武器として作ってしまったのです。

「わたしの、作成ミス……です」

キータは、取り返しのつかないことをしてしまったのでした。



―――――――――――――――――――<本文続き>―――――――――――――――――



「ふむふむ、なるほど。……これじゃあ仕方がないね」

ペラリペラリと羊皮紙を捲りながら、シンクレアさんが言います。
それはキータが武器職人の仕事のためにつけている台帳です。

『失敗の代わりになることなら、どんなことでもします!』

そう言ったキータに、シンクレアさんがまず最初に提案したのが、
失敗の原因となった台帳を見せることでした。

「私の注文は、間違いなく斬撃用の武器でいいね?」
「…………はい」

両手をぎゅっと握ってうつむいたまま、キータは頷きました。

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「さておき、字が汚い。整理もされていない。証文替わりには
 なるだろうが、自分で確認して見返す類の物じゃあないね」

読み書きが苦手なキータは、台帳での確認をサボりがちでした。
シンクレアさんの言う通りだったのです。

「お嬢ちゃん……キータさんだったね。
 本当に、なんでもするかい?」
「はい」

泣きそうになるのを堪えて顔を上げると、キータは真っ直ぐに
シンクレアさんの目を見返してなんとか頷きました。
その返事に満足したのか、シンクレアさんは話を続けます。

「私とお嬢ちゃんは行き先も違うし、また会う機会なんて
 そうそうないだろう。次の仕事を頼む機会もくるかどうか、だ」
「……そう……ですよね」

後悔しても、代わりの武器を作る時間はないのです。
よしんばキータが戻ってきて材料を買って代わりのものを作った
としてもそれを渡すのは二日は先のことになります。
旅人にとって一日という時間の重さはお金よりも重いのです。

シンクレアさんは、またキータが俯いてしまうのを見ると、
少し慌てたように話を続けました。

「もっとも、もしかしたらという事もある。そのもしもの時の
 ために二度と同じミスをしないと証明しておくれ」
「え…………」

驚いてキータが顔を上げると、シンクレアさんが自分を
じっと見つめていることに気が付きました。

「よーし。私はしばらくしたらまた戻るから、
 それまでに出来る事をやるんだ。いいね?」
「…………はい!」

キータは、もう俯いたりはしませんでした。





それからしばらく後のこと。
シンクレアさんが戻ると、キータは木板で作った大きな黒板や
羊皮紙の束をまとめたファイルを手にしていました。

「なにをしたか、聞かせてくれるね?」

シンクレアさんがそう尋ねると、キータは説明を始めます。

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「注文のときにミスがないように、作る武器の種類を項目ごとに
簡単にまとめた発注書を作りました!」
「自分でいつでも確認できるように、現在進行中のお仕事は、
仕事場においた黒板に書くようにします!」
「注文の台帳はきちんとファイルの中に整理して、すぐに
読み返せるようにまとめ直しました!」

自分の考えた『同じミスをしない方法を』一生懸命に説明する
キータの言葉を、シンクレアさんはじっと聞いていました。
一言一言に真剣な表情で頷きながら、最後まで一言も挟まずに。

「……これで、全部です」

全ての説明を終えると、キータはシンクレアさんを見上げて、
じっとその言葉を待ちます。
自分のやったことは間違っていたのではないかと、内心では
とても不安でしたが、俯いていては答えが貰えません。

シンクレアさんは、答える代わりに手を上げました。

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「よーしよしよし。いい子、いい子だ!」
「ひゃああ!?」

くしゃくしゃくしゃーっ

シンクレアさんはそれまでの厳しい顔とは真逆の満面の笑みを
浮かべると、全力でキータの頭を撫でました。
びっくりしたキータが変な声を上げるのもお構いなしです。

「間違いなんて誰でもするものさ。
 ちゃんと反省してるだけでも偉い偉い」
「え? え?」

まだきょとんとしているキータに、シンクレアさんは笑顔で
ウィンクを一つすると、こう言いました。

「その気持ちを忘れなければ、きっと立派な武器職人になるよ。
頑張るんだよ、キータさん」

そうしてシンクレアさんは、キータが作ってしまった失敗作の
大剣を受け取ると、笑顔のまま去って行ったのでした。


シンクレアさんは、今はひょんなことで旅をしているものの、
長い冒険の末に自分の国を作った女王なんだそうです。
女王は、国を、人を、
よりよくするための努力は惜しんではならない。
だから、キータのような、まだ未熟な子供が頑張っているのを
放っては置けなかった、と言っていました。

「国の皆は元気にやってるかの」

去り際のつぶやきには、今は遠くにある自分の王国を
思い浮かべていたのでしょうか。そんな風に思った一日でした。




ゲストさん:シンクレア=シンクレアさん



補足:
今回の絵日記は、12回目で自分が生産ミスでご迷惑をおかけしたことについて、シンクレアさんPLのcynclareさんのご許可を頂いて書かせて頂きました。
さらにはセリフの監修、文法ミスなどの修正までして頂いて、感謝の言葉もございません。
ご迷惑をおかけしてすいませんでした! そしてシンクレアさんを書かせて頂いてありがとうございました!


posted by りの at 03:28| Comment(0) | キータの日記
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