
「わ、これってチョコレートなんですか?」
「そそそ。この前のバレンタインデーのおすそ分けだよー」
今日のお客様は、謎のメイドさんことパーミルさん。
キータにチョコレートをプレゼントしてくれたのでした。
キータが貰ったチョコレートは、透明プラスチック越しに
かわいい人形型チョコが見える箱入りのもの。
「あーっ、これって知ってますよ!!」
その包装に大きく描かれているロゴを見つけて、
キータが嬉しそうに声を上げました。
「KT2って、アイドルさんの集まりなんですよね?」
それは、セルフォリーフでも有名なアイドルグループです。
キータにとってはつい最近知ったばかりの名前でした。
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「アイドルさんって、チョコレートも出すんですねー」
「まぁねー。ファンサービスってやつ?」
やっぱりアイドルさん本人が作ったんでしょうか?なんて
言いながら、しげしげとチョコレートを見つめるキータ。
「わー、でも、かわいいチョコですねー。
ずんぐりしてるけど、よく見たらパーミルさんみたいです」
デフォルメしたアイドルのデザインのチョコレート。
そのポニーテールを模した頭は黄色のチョコでできています。
長い金髪をポニーテールに束ねたパーミルさんと一緒です。
不思議そうに首をかしげるキータの肩を、
猫みたいな笑みを浮かべたパーミルさんがつつきました。
「キータ君、キータ君」
「はい?」
笑顔のまま人差し指で自分を指してみせるパーミルさん。
きょとんとしているキータに一言教えてあげました。
「それ私」
「え? あ……ああっ!?」
そう、パーミルさんはメイドでガンマンでアイドルなのです。

「えええええええええええええええええ」
チョコレートのパーミルさんと本物のパーミルさんを見比べて
間の抜けた驚きの声をあげるキータなのでした。
◆
「いやー、いいビックリだった。ナイスリアクション!」
「あ、うぅ……ご、ごめんなさいぃぃ……」
赤面してペコペコバッタになっているキータ。
アイドル本人のチョコレート貰って『そっくりですねー』とか
言ってた自分を思い返すと、もう頭を下げるしかありません。
「ま、KT2も最近知ったばかりじゃしょーがないって」
「いえでも、アイドルさんって知ってたのに…」
「いいっていいって、歌とか聞かせたってわけじゃないしねー」
「あうぅぅ……」
小さくなってるキータの頭をぺんぺんと撫でると、
唐突にポンと手を叩いてパーミルさんはこんな提案をしました。
「それじゃ、今度KT2の活動で応援に来るってのはどう?
キータちゃんのために特別席を用意してあげましょう」
「は、はい! 是非とも!!」
噂ばかりだったパーミルさんのアイドル的な活動を
目にする機会を貰えるならと、もちろん了承するキータです。
「よーし、いい返事だ! あ、これチケットね」
いい食いつきっぷりのキータに嬉しそうに頷くと、
パーミルさんはキータに一枚のチケットを渡しました。
「あ、はい……闘技大会!?」
チケットはセルフォリーフで開かれる闘技大会のもの。
ちょっとアイドル活動からはズレてる気がするキータです。
「それじゃ、応援待ってるよん」
そして、びっくりした顔のままのキータをおいて、
パーミルさんはひらりと手を振って去っていくのでした。
◆
「あ……名前…………!?」
そして、またまた名前を聞き忘れていたキータ。
チョコレートの箱に書かれた名前をじっと見た後、
結局、本人から読み方を教えてもらうことにしたのでした。
ゲストさん:パーミル・クレセントさん