
場所はとある小さな酒場の隅にあるテーブル。
そこでキータはお客様に武器の引渡しをしていました。
「どうぞご確認ください!
ご注文の“走月”4本と“高速鉄鋼弾”1ケースです!!」
キータが指し示したのは、机に並べられた二組の武器。
投擲用の直刀数本と銃弾の詰まったケースです。
「うん……良さそうね。期待通りの出来だわ」
銃弾を一つ手にとり、その質を確認すると、
お客様である機械技術者の少女、ミリさんは笑顔で頷きました。
「“走月”の方はいいんですか?」
「うん、いいの。そちらの武器は相棒のものだしね。
それに、この弾丸を見て、貴女がいい職人だって分かったから」
キータよりも二つも年下の少女ですが、機械技術者夫婦の娘。
子供の頃から接してきただけあって、
細かい部品の質を見る目はキータよりずっと確かなのでした。
「武器の作製ありがとう。お互い頑張りましょうね」
「はいっ! 相棒さんにもよろしくお伝えください!!」
そうして、ミリさんは二組の武器を手に酒場を出て行きます。
なんとか今回も無事に武器作りの仕事が終わったのです。
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「はふ〜……疲れました」
お客様が酒場から去ると、キータはぐにゃりとテーブルに
突っ伏して、そのまま木の板と一体化してしまいます。
「キータさん。お疲れ様です〜☆」

そこにふよふよとやってきたのは、お盆を手にした妖精さん。
彼女はキータの前にお盆に載った木のカップを置きました。
「はい、オレンジジュースどうぞ♪」
「ありがとうございます〜…」
出涸らしみたいにぐんにょりしていたキータも、
カップに満たされたジュースを飲むと少し元気になります。
「ふわ〜…甘いものを飲むと、元気が出ますね〜……」
「キータさんのお気に入りですね☆」
この小さな妖精さんはルリさん。
小さいながらもこの店で接客やウェイトレスをしている
可愛らしいフェアリーさんなのでした。
「はい、お気に入りです〜」
ほひゅー、と息を吹くキータ。
先ほどまでと比べると、顔色もだいぶ良くなっています。
「キータさん無理してません?」
「んー…さいきん、ちょっと睡眠時間が少なくて」
「まぁ、ダメじゃないですか。
ちゃんと寝ないとお仕事とか冒険に差し支えちゃいますよ?」
「うーん、でも、あとちょっと頑張れば楽になるので……」
口を抑えて欠伸をかみ殺しながら、
キータは床に置いていた大荷物を背負って立ち上がります。
「よしっ、あと一息! もうちょっと頑張れそうです!!」
顔をパンパン叩いて気合を入れると、
キータはお会計の硬貨をテーブルにちゃりんと置きました。
「あんまり無理しちゃダメですよ?」
「あ……はいっ! また今度、ゆっくりお邪魔しますね!!」
急ぎ足に酒場を出て行くキータを見送るルリさん。
キータがくぐりぬけた入り口の戸の上では、
涙滴型をした看板が、風に吹かれて揺れています。
そこには色あせた文字で『スライム亭』と書かれていました。
ゲストさん:
ミリ・マキネマギアさん
コミュニティ「スライム亭」